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2015/01/15~

神眼の勇者

神眼の勇者WEB修正版 第99話


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  ◆◆◆
 
  ――オサワ島から、そう遠くはない海域の仄暗い海底。

 闇女神の一柱である《海の大邪神クトォリア》を祭る“海底神殿”が存在していた。

「……よもや、重ガレオン級までもが沈むとは、な」

 神殿内部、無数の死体がそこかしこに“浮”いている“生贄の間”にて、大司教アストゥルモは不快そうに呟く。
 青色を基調とした《司教服》を着た男だ。
 人型ではあるが“人間(ヒューマン)”ではない。少なくと、“地上に住む人間”ではない。
 その姿は“異形”であった。
 蛸と人が組み合わさったような姿だったのだ。
 顔は人間に近いが、頭部が異様に大きい。手は人間と大差ないが、足は、蛸の触手であった。
 《半漁人(ギルマン)》という種族、それも《海の司教(シービショップ)》と呼ばれる高位種族だ。

 また、同じく《海の司教(シービショップ)》であるクトォリア教・闇司教ローマリも、“生贄の間”にいた。
 闇司教ローマリは、マコトが沈めた重ガレオン船に“導き手”として乗船していた。
 人間である多くの海賊たちは水死したが、闇司教ローマリとその護衛である《海の僧兵(シーモンク)たちは、生き残り、海底神殿に帰還していた。

 《半漁人(ギルマン)》系種族でも、闇に属し、昏く深い海底を支配する彼らは、《深き者たち(ディープワン)》あるいは、《深き半漁人(ディープギルマン)》などとも呼ばれている。

 その彼らが、オサワ島を占領していた海賊たちを、秘密裏にだが、実質的に支配・操作(コントロール)していた。

 『赤髭の海賊王』と呼ばれていた人間の男を、表向きは海賊たちの長として君臨させてはいた。
 だが、裏で糸を引いていたのは、《深き半漁人(ディープギルマン)》たちであった。
 闇司教ローマリやその部下が、“より人に近い姿”で、海賊たちに布教しつつ、既に“洗脳”済みの『赤髭の海賊王』を監視してもいた。
 ”眷属化”が進みつつあった『赤髭の海賊王』は、マコトによる、丸太の爆撃が直撃し、即死してはいたが。

「しかも、10人の闇の司祭を束ねる闇司教たるローマリ・レブィル。お前ほどの者が、乗船しておりながら、みすみす大破させられるとはな。それに、”眷属化”がよほど進んでいた、ごく少数の者をのぞき、海賊どものほぼ全てが死んだため、島の支配も難しくなった」
「め、面目ありません」

 千年を生きる大司教アストゥルモに比べれば、若造に過ぎない300歳と少しである闇司教ローマリは顔を伏せながら、委縮していた。

 闇司教ローマリは、心底、闇の大司教アストゥルモを畏れ、敬っていた。
 海の邪神クトォリアを崇める“教団”において、大司教アストゥルモのほうが地位も上だが、それだけでない。
 《闇司祭》としての“実力”も圧倒的に差がある。
 なにより、大司教アストゥルモは、闇の母なる『海の大邪神クトォリア』に認められし《使徒》なのだ。

 闇の大司教アストゥルモの不興を買えば、どのような目にあうか――闇司教ローマリは、恐ろしさで震え続けていた。
 以前、アストゥルモの怒りに触れた闇司祭は、想像を絶する苦痛を”永遠に”受け続ける《不死の肉塊》にされてしまった。

「カカカ。まぁまぁ。よいではないか、アストゥルモ殿」

 上機嫌な声でとりなすように言ったのは、種族は同じく《海の司教(シービショップ)》であるスクリッド・カドル。 
 ただ、彼は、蛸ではなく、イカと人が組み合わさった奇怪かつ異形の姿であったが。

「スクリッド。貴様は、”海での死者”させ増えれば、それでよかろうがな」
「カカ。否定はせんよアストゥルモ殿」
「貴様は海の邪神でも、海における《死》を司る《海の死人神レミティリス》の大司教だからな」
「《使徒》でもあるがな。クカカ」

 この場における”立場”は上ながら、アストゥルモは、千年を生きた自分の、さらに倍以上を生きているスクリッドに、多少の遠慮があった。
 闇司祭としてのスクリッドの”実力”も認めてる。
 同じ海の闇女神でも、闇の母たる《海の大邪神クトォリア》とその従僕神である《海の死人神レミティリス》では、アストゥルモが仕える《クトォリア》の”神格”は上であった。
 仕える神の”神格”に差があれば、同じ《大司教》でも、違ってくるものだ。
 それでも、アストゥルモはスクリッドに一目置いている。
 万を超す海の死人どもを操り、一夜にして数国を滅亡させた”実力”、そして、底の知れない”不気味さ”が、スクリッドにはあった。
 
「フン……“海における死者”が増えれば、それだけで単純に機嫌をよくしおって」
「クカ。クカカカ。苦しみ、もがき、無念と恨みを残した死者や、邪悪な魂をもちながら、海で死んだ者が増えるほど、我が神《レミティリス》は、”力”を得るし、なにより、喜ばれるのでな。鬼畜な行為を繰り返し魂を汚した……おっと……“闇に染めた”海賊ども数百人が、もがき苦しみながら海で死んだのだ。《海の死人神レミティリス》も満足であろうよ。カカカカカ」

 上機嫌で笑いつづける”同胞”を、不愉快そうにアストゥルモは睨む。

 そして、苛立ちを隠さず、
「だが、このままでは、我らの“大儀式”達成に支障をきたす。あの島は、“大儀式”に必要なのだ」
 と、闇の大司教アストゥルモは続けた。

「なぁに、あの島の近くで、多数の死人がでたのじゃぞ。それも、腕に覚えのある屈強な海賊という死人がな。なんなら、我が“力”で《死人兵》として蘇らせ、島を再び占領してやってもよいぞアストゥルモ殿」
「愚かな。多数の《死人兵》などを使役し人目に晒せば、地上における人間の国王たちを刺激するではないか。人間どもの多くは、“闇側の勢力“が拡大することを過敏に恐れ、排斥しようとすることを、知っているであろう」
「じゃが、人間どもにも“闇側”に属する者はいる。秘かに“闇”に組する者や、“闇”に魅入られ取りこまれた者も、少なくない」
 スクリッドは、ニタァと邪悪な笑みを浮かべつつ、続けて、
「東方大陸における最大国家・大黄華帝国(ダイオウカテイコク)の皇帝のようにのぉ。クカ、クカカ、カカカカ」
 と、言った。

「スクリッド……貴様もしや……」
「流石に知恵者であるアストゥルモ殿。察しが良い。大黄華帝国・皇帝を利用し、その軍事力を持って堂々とあの島を侵略させてみるのも面白かろう、と、儂は具申しておこう」
「それは、拙速にすぎる」
「アストゥルモ殿の深き知識と知恵、そしてその“力”には感服しておるよ。しかし、あれじゃな。貴公は慎重がすぎる」
「…………」
「もともと、あの島の珊瑚を欲しがっていた海賊たちを影から――いや海の底から――操り、島ごと占拠させたのは良い。上策じゃよ」

 スクリッドは、”闇側”において、上位の席であるアストゥルモを持ち上げるように言った。
 さらに、
「同じ人間である海賊ならまだしも、“闇側”の、それも《深き半漁人(ディープギルマン)》たる我らが“表”に出ると、周辺諸国が放置せんのでな。しかし、珊瑚やその他の財を欲し、連合した海賊どもが占領しただけならば、諸外国が無視する公算は大きい。実際、周辺国家は動かなんだ」
「ああ、そうとおりよ」
「そして、海賊どもを隠れ蓑とし、儂らは《大儀式》に必要な準備を島で整えておく」
「…………」
「島民を海の邪神たちへの生贄にしたり、海賊どもを”眷属化”あるいは”改造”しつつ、な。悪くない手じゃよ。だが――」
「…………ふん」
「その計画はとん挫した。少数の冒険者たちによりの」
「結果としてな」
「偶然ではあろうが、潰されたことには変わらぬ。ならば、次の手を早急に打つべきであろうよ」
「その手というのが、大黄華帝国の“軍”による侵略及び島の占領か」
「カカ、そうよ。そもそも、海賊どもは大黄華帝国の出身。いや、それどころか、大黄華の帝国軍人どもではないか」
「私掠免状を配布された、海賊上がりだが、な」

 闇の大司教アストゥルモとスクリッドが言ったことは、事実、であった。
 海賊たちは、大黄華帝国から私掠免状を受けており、帝国軍に属する“海兵”でもあったのだ。

 オサワ島、周辺海域で乱獲した宝石珊瑚の何割かを、秘密裏にだが、帝国に上納してもいた。

「海賊上がりでも、海賊と海兵の二足のわらじを履いていようとも、奴らが大黄華帝国の国民であり、軍人でもあったことに違いあるまい」
「だが、スクリッドよ。オサワ島の占領にあたっては『大黄華帝国と直接関係はないただの海賊と“偽装”』もしていた。なぜかわかるか」
「無論。東方大陸における覇者たる大黄華帝国が、オサワ島を落とし、占領したとあれば、これまた周辺諸国を大いに刺激するのでな。場合によっては、周辺国により連合軍を組まれることもありえる。なにせ、オサワ島は、東方大陸と西方大陸の丁度、中間に位置する。大黄華帝国の西方大陸侵略における中継地・補給地になりえる島ゆえ。占領された島を取り返そうと、西方大陸北東地域の諸国連合と大黄華帝国・北西軍との大海戦もありえるのぉ…………さぞかし、死人がでるあろうなぁ、クカカカ。それに、かなり”目立つ”で、あろうのぉ」
「そうだ。それがわかっていながら、大黄華帝国の軍を動かすなど拙策を口にするではない。オサワ島に限らず《大儀式》の準備は、目立たぬようにすべきなのだ」
「カカ。しかし、もはや悠長なことはいっておられまい」
「…………」
「オサワ島では、《大儀式》の下準備を秘密裏にだが、しかし着実に進めておったのじゃぞ」
「……わかっている」
「そして、いまも《大儀式》における魔法陣などが、島にそのまま残っておる。《闇の儀式》に詳しき者が島で調査すれば、我らが成そうとしていることが、暴かれ、地上世界の住民たちに知れ渡る恐れすらある」
「それは……むぅ……」
「早急に、あの島を再び占領するか――それが難しければ、いっそ証拠隠滅するために“沈める”必要があるではないか」
「…………」
「大黄華帝国の皇帝は、もはや我らの操り人形同然。軍による占領後は、あの程度の島の1つや2つ、“教団”へ“寄進”させることは容易い。むろん、“教団”といっても“表の顔”にじゃが。大黄華帝国でも、皇帝はともかく、他の人間は、“闇側”に拒絶反応がやはり強いからの」
 大黄の民と《深き半漁人(ディープギルマン)》の“混血児”は、億を超す大黄華帝国の総人口に比べれば、まだまだ数が少ないしのぉ――と、スクリッドは苦笑した。

「…………」
「アストゥルモ殿よ、《大儀式》の達成を早めることは、海の邪神にして深海の母《クトォリア》も強く望んでいることではあるまいか。無論、最上級神たる《クトォリア》の従僕神である、我が神《レミティリス》も、な。クカカカカ」

 大海戦を引き起こせれば、それこそ多くの死者を昏き海底に送りこめる。
 引きずり込める。
 海における“死”を司る《海の死人神クトォリア》の《使徒》である、闇の大司教スクリッドにおいて、大海戦こそ、強く望むべきことであった。

 スクリッドも、最終的には《大儀式》の達成をこそ、望んではいたが。

「……大黄華帝国の皇帝をその気にさせ、北西地域の軍を動かさせるに、急いでも10日はかかるが」
「カカ。まぁ、それは仕方あるまいよ。では、儂は、今回、水死した海賊どもで《死人兵》どもと《死霊船》による“死の海軍”でも編成しておくとするかの。念のためにのぉ、クカカカ」
 闇の大司教アストゥルモが、その目に狂信的な光を湛えつつ、
「《大儀式》を達成し、地上の“全て”を昏き海底に沈ませてみせる」
「カカカ。かつてないほどの“海の死人”がでることを我が神《レミティリス》は大層喜ばれるであろう。もちろん、地上のありとあらゆる全てを憎む《クトォリア》も、な。クカ……クカカカカカ」

 自分の思惑通りに進みそうなことを、闇の大司教スクリッドは目を細め、喜んだ。
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