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2015/01/15~

神眼の勇者

神眼の勇者WEB修正版 第1話


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 俺は、不登校かつ引きこもり気味の17歳だ。

 今日も、学校に行かず(行けず)昼間から家にいた。
 いつもと変わらない退屈な日になる――そう思っていた。
 だが非日常的な事が起きた。
 部屋で漫画の単行本を読んでいると、突如、頭上が輝きだしたんだ。
 天井を見あげたら、幾何学模様の魔法陣が浮いていて、俺は絶句した。
 そして次の瞬間、意識がフッと…………闇に沈んだ。



 ――…………う……ん?

 意識が戻ってくると、知らない建物の中にいた。
 床や壁、天井が白い大理石で出来た、広い建物だ。
 まるで、昔、映画で見た古代ギリシャや古代ローマの建築物――それも神殿――の内部みたいだった。
 さらに、目の前には二十歳前後の驚くほど美しい女性が立っていた。
 古代ギリシャの女神が身につけるような衣服を着た、金髪碧眼の凄い美人だ。
 まさに女神のように美しい。
 気高く、厳かな雰囲気――まさに神々(こうごう)しいオーラ――のようなものまで出ていた。
 そして、よく見るとその女性は、床から十数センチほど足が浮いている。
 宙に浮かんでいるのだ。

 ――俺は、夢でも見ているのだろうか?

「…………どうやら、また失敗したみたいだな」

 美女は俺を見下ろしながら、不機嫌そうな口調で言った。

アステナ見下ろし


 その視線は、つまらないモノを見ているかのようだった。

「あ、アンタ誰だ? それにココは一体?」

 狼狽えながらも、俺は口を開く。

「私は “時空” を司る女神アステナ」

 め、女神だって?
 普通なら、この女、頭がオカシイと思うはずだが……でも、宙に浮かんでいるからな。
 まさか…………本物の女神、なのか?

「そして、ここはお前からすれば異世界。異世界マナステシア。私がお前を召喚した」

 い、異世界……召喚…………だと。

 退屈な日常を過ごしていた俺は、異世界に勇者や英雄として召喚されたいとは思っていた。
 だが、ほ、本当にそんなことがあるなんて。

 …………まぁ、これは夢だろうけど。

 きっと俺は夢を見ているんだ。


 そうに違いない。
「勢力拡大の為、英雄・勇者としての力を持つ者、
 あるいは英雄や勇者になれる素質ある者を召喚したつもりだったが…………
 またしても、くだらない人間を召喚してしまった」

 そう言って、首を振りながら溜息をつく女神アステナ。
 さっきから、俺、ディスられているのか?

「基礎的ステータスは、この世界に住む一般の人間よりは多少優れている。
 しかし、それだけだ。
 特別な能力もなければ、戦闘技量に秀でているわけでもない。ましてや、お前は魂の輝きが鈍い。とても英雄や勇者になれる人間ではない」
「………………」
「お前のような屑など不要。いらぬわ」

 今の言葉は胸に刺さった。
 屑呼ばわりもそうだが、不要とか、いらない、と言われたのがショックだった。

「…………そうかよ。だったら、早く元の世界に俺を帰してくれ」

 俺は、拗ねたような口調で言った。

「あいにくだが、それは出来ぬ相談だ」
「な、なに?」
「異世界からの召喚は、時空を司る女神たる私でも相当な『力』を消費する。
 そして、異世界へ戻すことは、より『力』の消費が激しい。
 なにより、お前のような屑の為に使ってやる『力』などはない」

 勝手な事をいう奴だ。
 神様だろうがなんだろうが身勝手すぎる。
 勝手に召喚しておいて、元の世界に帰さない、だって?

「ふ、ふざけ――」
「目障りだ。消え失せろ屑」

 俺が抗議の声をあげる前に、女神アステナが片手を振るった。
 瞬間、目の前の景色が歪む。
 そして――俺の意識がまた消えた。

1201神眼の勇者カバーのコピー

   ◆

 ――月が二つある。
 ――空を馬が飛んでいる。天馬(ペガサス)ってやつか?
 ――本当に、異世界……なのか?

 次に目が覚めたら、俺は草原の上で仰向けに倒れていた。
 身勝手な女神アステナにより、この草原へ飛ばされたのだろうか?
 俺は、自分の頬をつねってみた。

 痛い。 

 痛みがあるということは――まさか夢じゃないのか?
 現実であることに気付き始めた俺は途方にくれた。
 この先、どうすればいいのか分からない。不安でたまらない。
 だが、じっとしていれも事態が好転するとは思えないので、とりあえず移動してみることにした。
 幸い、近くに街道があった。
 道に沿って歩いていけば、町か村につくかもしれない。
 俺はとりあえず、沈みかかっている夕日の方向へ、足を進めた。

 数十分ほど歩いた。

 街道の端に、誰かがしゃがんでいるのが見えた。
 老婆だ。それも、かなり汚れた格好の老婆だ。
 よく見ると、老婆は目を瞑(つむ)っていた。
 眠っている訳ではなさそうだが。

 俺は声をかけるか迷った。

 このまま街道を進んで、人のいる町か村にたどり着けるのか、尋ねたかったからだ
 しかし、コミュ症気味の俺は、見ず知らずの人間に話しかけるのが苦手だ。
 それに、ここは異世界。
 言葉が通じるか懸念もあった。
 しかし、俺が話しかける前に、老婆が声を掛けてきてくれた。

「もし……そこのお方」

 俺は老婆から数歩の距離で立ち止まる。
 老婆は目をつむったままだ。ひょっとして、目が悪いのだろうか。
 ならばなぜ、俺の存在に気付けたのだろう?
 盲人だけに、耳が良く足音で察知した?
 それとも、人の気配に敏感だとか?

「街道を歩いていなさるなら、旅人かね? どうか、この目の見えない哀れな老婆に、食料を恵んでくださらんか…………二日前から、何も食べていないのですじゃ。腹が減って死にそうなのです」

 老婆は憐れみを誘う声で、俺に食べ物をねだってきた。
 食料……か。
 俺は着ているパーカーやジーパンのポケットを探る。
 後で食べようと入れておいたカロリーメイトの箱が見つかった。
 この老婆にカロリーメイトをあげるべきか?
 しかし、町や村までどのぐらい歩くか分からない状況だ。
 貴重な食料を見ず知らずの他人に差し出すのは…………。

 俺は迷った。

 迷ったが…………結局、半分に当たる二ブロックを老婆にあげることにした。
 二日前から何も食べてないなんて言われたら、人としてあげないわけにいかないからな。
 ところで俺は今、鼻が詰まり気味で匂いに鈍感だ。
 その俺でも、老婆にカロリーメイトを手渡そうと近づいた際、あまりの悪臭に鼻が曲がりそうになった。老婆からは凄まじい悪臭がしていたのだ。

「おお、なんと美味しい食べ物ですじゃ。ありがたやありがたや」

 俺があげたカロリーメイトを食べた後、感謝を示してくる老婆。
 良いことをした後なので、悪い気分ではない。

「なあ、お婆さん。俺、町か村まで行きたいんだけどさ。このまま、この街道を進んでいけばいいのかな?」
「ええ、この街道に沿って、半日も歩けばルーアという小さな町がありますぞ」

 半日も歩く必要があるのか。
 俺はうんざりした。
 町の存在を知ったことで、もっと明るい気分になるべきかもしれないが、あいにく、俺はあまりポジティブ思考な人間ではない。

「教えてくれてどうもです。じゃあ、俺はこれで」

 俺は老婆に別れを告げて歩きだそうとした。

「待ってくだされ」

 老婆に声を掛けられ、後ろを振り向く。

「実は儂はルーアの町に向かっていましてな。途中で足を悪くして動けなくなってしまい、途方に暮れていましたのじゃ…………本当に本当に、申し訳ないのですが、町までこの老婆をおぶってくれませんかのぉ」

 老婆は俺に縋(スガ)る様な声で頼んできた。

 …………どうする?

 老婆の体重は軽そうとはいえ、人一人背負って半日歩くのはツライ。
 それにこの老婆、こう言っては悪いが、見た目が汚すぎる。
 悪臭も酷い。

 この老婆を背負って半日も歩くのは、流石に――

「お願いします。このままでは、儂はここで野たれ死にですじゃ。どうか、お慈悲を。どうか、どうか」
 
   ◆

 結局、俺は老婆を見捨てられず、背負う事にした。
 だって仕方がない。見捨てて、本当に野垂れ死にされたら、目覚めが悪すぎる。
 老婆を背負いながら街道を十数分、歩いた。

「すいませんのぉ……本当に助かりますじゃ」

 恐縮して何度も礼を老婆は言ってきた。
 その老婆を背負いながら、俺は会話をした。

「ほぅほぅ、地球という場所から女神アステナに召喚されたと。しかも、不要と判断され、草原に飛ばされたですと…………なんと、気の毒なお人じゃ」

 俺が自分の身に起ったことを話したら、老婆はアッサリと信じてくれた。

 老婆の話では、どうもこの世界では、女神を含めた『神』というものは、結構頻繁に人間の前に姿を表す存在らしい。
 人間より優れた『力』を持った存在でありながら、驕りや油断などでわりと失敗したりもするようだ。
 それに神々同士で権力争いをしたりする権勢好きな者や、人間にも手をだすほど好色な者も多いらしい。
 ギリシャ神話の神様たちのように、人間臭い神様たちのように思えた。
 女神アステナも傲慢かつ身勝手な性格だったし。
 あの女(女神)のことを思い出したら、また腹が立ってきた。

 …………いつの日か、あの女(女神)に借りを返してやる

「本当にあのクサレビッチ女神は、どうしようもなく性根の腐った奴ですじゃ。そのくせ、信者の数は多く『力』を持っているので、タチが悪い。
 確かにあのクサレビッチ女神が、自分の使徒として利用するために異世界から人間を召喚しているわ。
 そして、さほど見込みがない人間を呼び出した時は、貴方にしたように、《転移》の魔法を掛けて適当な場所に放り出すようね。本当にあのクサレビッチ女神は最悪…………今すぐ死んでほしいわね」

 俺の背で老婆が女神アステナの悪口を言い続けている。
 まるで、個人的な恨みでもあるかのように辛辣だった。

 ……なんだか、口調が後半から変わったな。

 声質も老婆のかすれた声から、若々しい声に変わったような?

 それに、あの吐き気を催すほど臭かった匂いが消え、むしろ、バラの香りのような匂いがしてきたぞ?

「もういいわ。降ろしてちょうだい」
「え? あ、ああ」

 俺は老婆(?)を背から降ろすべく、しゃがみ込んだ。 
 背から老婆が降りた後、俺は首を傾げながら後ろを振り向く。

 そして――絶句した。

 老婆ではなく、美少女が立っていたからだ。
 十八歳前後に見える、銀髪の美しい少女だった。
 左右の目が金色と銀色という風に違った。
 いわゆるオッドアイだ。
 それに足が、地に十数センチほど浮いてもいた。
 着ている服も、薄汚れた灰色の麻製・長衣(ローブ)から、汚れ一つない純白の絹に変わっていた。

「私は “神々の目” を司る女神リアナ」
「…………」
「神眼の女神リアナとも呼ばれています」
 宙に浮くオッドアイの美少女が、自己紹介するように言いながら俺に微笑んだ。
「私の使徒に欠員が出来たから、良い人を探していたの。薄汚れた醜く、哀れな老婆に変身をしてね。私の使徒は、他人を思いやれる優しさと博愛を持っていることが、第一の条件だから」

 このオッドアイ銀髪美少女が、さっきの老婆……なのか?
 彼女もまた……女神?
 足が宙に浮いているし、それに雰囲気がとても神々(こうごう)しい。
 確かに――女神かもしれない。

「この数日、街道を旅する人間のうち醜く汚れた老婆に変身中の私に、食料を渡してくれたのは数人だけだった。また、背負ってまでくれたのは、貴方が初めてだったの」
「…………」

 女神リアナと名乗った女性はニコリと微笑み、
「異世界からこの地に呼ばれた優しき者よ。女神として貴方に『力』を授けてあげましょう」
「ち、『力』を俺に?」

 有難い話だが…………なにか “裏” はないか俺は警戒した。

「ええ、私の『力』の一部をね。ただ、私の使徒になれるかどうかで、授けられる『力』にも大きく差はあるの。
 まず、私の使徒にはならない場合だけれど
 ――遠くのものを良く見えるようにしたり、戦闘などで相手の動きをしっかり見えるようにしてあげるわ」
「それって、単純に動体視力を含めて目が良くなるってこと?」
「まぁそういうことね。使徒ではないので、ちょっとした『力』しか授けられないから。
 でも使徒になれるなら、もっと大きな『力』を授けてあげるわ。
 そう――例えば『神眼』を」
「神眼?」

 なんだか凄そうだな。

「神眼があれば、自分だけでなく他者の情報を知ることが出来るわ。
 また、過去に起きたことや、不確定ながら未来に起きることまでも “視る” 事が可能なの」
「そ、それは凄い」
「ただし、神眼を授けられるのは、私の使徒になってくれる人にだけ。
 どう、貴方は、私の使徒になってくれるのかしら?」
「いきなり言われても。使徒って、具体的にどんな存在なんだ……ですか?」
 隷属するような立場になることを、俺は警戒した。
「神や女神によって使徒のありようは様々よ。
 でも、基本的には、人間の運命に自ら干渉しないタイプである私は、使徒に対しても、なにかを強制はしません。
 自由に生き、それぞれの運命を享受してもらえればいいの。
 英雄的・勇者的行いをした場合は、私の使徒であることを他の人間達にアピールはして欲しいけれど」

 使徒とやらになっても、義務やデメリットは発生しないのか?

 だったらなっても…………いや、しかし…………。

「迷っているわね。いいわ、こうしましょう」

 女神リアナは指を一本立て
「一か月の間、『仮の使徒』になるのはどうかしら。その間、『神眼』を貸し与えてあげるわ」
「仮の?」
「ええ、仮の使徒よ。私としても、優しさだけで、正式な使徒にするわけにもいかないし、時間が欲しいわ。貴方の事を見極める為にもね」

 試用期間みたいなものか?

 悪い話では、なさそうなんだが…………。

 俺は少し考えたのち――仮の使徒とやらになってみることに同意した。
 神眼という凄そうな『力』に興味もあったしな。
 それに、彼女は悪い人(女神)には、思えなかった。

 女神リアナから、目を瞑るように言われ、俺は素直に従った。

 彼女はその美しい手で、目を瞑っている俺の右目の瞼をそっと撫でた。

「これで、貴方の右目に神眼の『力』が宿ったわ。そうね……まずは自分の情報を知りたいと強く念じて見なさい」

 俺は言われた通りに念じて見る。
 目の前に半透明の枠が浮かんできた。
 これは…………コンピューターRPGなどによくあるステータス画面に近いな。

 枠の中に書かれている俺=丸田(マルタ) 真(マコト)の情報は

――――――――――――――――――――

マコト・マルタ

 人間
   17歳

   筋 力  20
   器用度  16
   敏捷度  18
   知 力  20
   生命力  20
   精神力  16
   魔 力  22



    職 能 :  無し
    スキル :  神眼
    習得魔法:  無し

 ソウルランク   1

――――――――――――――――――――


 だった。

 能力が数値化されているが、高いのか低いのか、俺にはよくわからん。
 俺の心を読んだように、女神リアナが教えてくれた。

「筋力や器用度、魔力などは一般の人間で十が標準よ。20十あれば、その能力は人よりかなり優れているわ」
「俺は平均して、20近くありそうなのだが…………」

 おかしい。
 俺は自分の能力を平均以下だと思っている。
 腕力や知能はまぁ人並みだとしてもだ。
 かなり不器用で鈍くさい人間だという自覚はある。

「貴方の基本ステータスはなかなかに優秀よ。千人に一人、と言ったところです」
「俺が、千人に一人の優秀さだって? 俺は元いた世界だと平凡以下の人間…………だったのに」
「腐れビッチ女神ことアステナは、この世界の一般人より基本ステータスがずっと優れている世界の住人を呼びだしているようなの。その世界からどんな人間が呼ばれるかは、不確定(ランダム)のようだけれど」

 つまり、平均的な地球人なら、能力値も俺と同等かそれ以上なのか。
 そして、地球では平均以下だった俺でもこの世界なら、そこそこ優秀のようだ。

「ステータスの詳細な説明などは、その部分を知りたいと願えば知ることが出来るから。
 じゃあ…………そろそろ、私は天界に帰るわ。やらなければいけない事もあるし。貴方の事、天界からなるべく様子を見ておくことにするからね」
「え? ちょ、ちょっと待ってくれ……ください」
 俺は天に向け、空高く浮かんでいく女神リアナを呼び止めた。
「貴方の力で、俺を元の世界に帰してもらえませんか?」
「あいにくだけれど、私にはそういった『力』はないの…………ゴメンなさいね」
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 女神リアナは天に還って行った。
 残された俺は、町に続くという街道を一人で歩きだすことにする。

 しかし、何だって俺がこんな目に。
 つまらない日常を過ごしていた俺は、異世界に勇者として召喚されたいとは確かに、思っていた。
 異世界で勇者や英雄とされ、人々から必要な人間だと思って欲しかった。
 だが、召喚と同時に不要と判断されたりはしたくなかった。
 不要なモノを捨てるかのように、飛ばされたくなどはなかった。

「……チクショウ」

 チクショウ……チクショウ……チクショウ。

 いかん。

 どんどん、陰鬱な気分になってきた。

 少しは前向きに考えよう。

 俺を不要と判断した時空の女神アステナとは別に、他の女神に俺は出会えたんだ。
 そしてその女神リアナから『神眼』という特殊な力を授かった。
 それに、どうやら俺はこの異世界なら、基礎能力がなかなか優れているようだ。
 不安は凄くあるが、なんとか生きていけるかもしれない。
 いや、生きていかないと。

「野垂れ死になんて……ごめんだ」




 
 ――七、八時間ほど街道を歩き、やっと町が見えてきた。

 夜になり、あたりはすっかり暗くなった。

 夜空には星々と二つの月が輝いている。

「(しかし、長時間歩いたわりには、さほど疲れなかったな)」

 これほど歩いたのに、足が棒のようになってもいない。
 地球では、不登校かつ引きこもりがちの俺は体力と筋力が落ちすぎないように、ほぼ毎日、筋トレやジョキングはしていた。
 筋トレは部屋で行い、ジョキングは人が少ない夜に近所の公園まで。
 といっても、大した量でも距離でもなかった。
 筋力や体力が人より優れている自信は、まるでない。
 それなのに、これほどの距離と時間、歩き続けてもほとんど疲れていない。
 ひょっとして、この異世界では、ステータスにおいて俺の生命力とやらが結構高いからか?
 標準が10らしいのに、倍の20も生命力があった。

 この異世界では、相当、俺は体力に優れているのかもしれない。
 
   ◆

 町は、俺の背よりも高い木の柵で囲まれているようだ。

「(野生動物、あるいは盗賊の侵入を防ぐための柵か?)」

 ひょっとしたら、モンスターを防ぐためかもしれないが。
 そういえば、モンスターには一匹も遭遇しなかった。
 天馬(ペガサス)がいるなら、モンスターがいてもおかしくはない気もするが。
 まぁ、安全そうな街道を歩いたし。
 人間が踏み固めた街道は、モンスターの遭遇率(エンカウント率)も低いのだろう。

 ……多分ね。

 そういえば、この町の名前はなんだったかな?

 お?

――――――――――――

 ルーアの町 

  神聖ガープ帝国領
    
   人口:5人
   特産:材木


――――――――――――

 柵越しに町を覗いていたら、こんな情報が書かれた半透明の枠が浮かんできた。

「(これも神眼の……力か?)」

 知りたい情報を容易く知れるから、便利だな。
 しかし、神聖ガープ帝国領というのは、この町を領土している国の名前だろうか?
 俺が今いる場所も、神聖ガープ帝国という名前の国の中なのだろう。
 それはいいのだが、町の人口5人とは、少なすぎではないだろうか?
 中世ヨーロッパの村や小さな町は百人以下の場合も結構あったらしいけど、いくらなんでも5人は少なすぎだ。

「(町になにかあったのだろうか?)」

 おそらく、大多数の住民の転住による廃村化で、残っている住民が少ないだけ――だとは思うが。
 俺は不安を感じつつも、開いていた門を通り中に入った。
 夜中ということもあり、町の中は静まり返っていた。
 どこかもの哀しい雰囲気が町には漂っていた。
 5人の住民はどこかの家にいるのだろうか?

「(数十軒はある建物のどれかに、住んでいる?)」

 俺は、明かりのついている家を探して、町の中をウロついた。
 途中、材木が山のように積まれているのを見た。

「丸太……か。そういえば、丸太を武器にして吸血鬼と闘う漫画があったな」

 俺は、山と積まれた材木――『丸太』――を見て、呟いていた。
 ちなみにその漫画を俺は大好きなので、丸太を見て、連想していたのだ。
 また、この町の特産が材木だったことも思い出す。
 裏手にある山から、町の樵(きこり)が切ってきたのだろうか?
 では、残っている5人の住人は、少なくとも一人は樵なのだろうか?
 なんにせよ親切な人だと、有難いのだが。
 見知らぬ人間(俺)に食事を奢って家に泊らせてくれる程の親切さを期待したい。
 まぁ、空き家が多い廃村のようなので、住むところはなんとでもなりそうだけど。
 空き家とはいえ、勝手に寝泊まりしていいかは、別にしても。

 しばらく町の中を歩いた俺は、広場を見つけた。
 小さな噴水のある広場だ。
 噴水の近くに…………誰かが立っている。
 背中を向けているが、おそらく女性だ。

「(ようやく人を見つけた)」

 俺はほっと安心しながら、その女性に近づく。

「あ、あの……すいません」

 警戒させないように、なるべく優しげな声を俺は出した。
 コミュニケーション能力が不足気味であるコミュ障気味の俺なので、多少ドモってしまったけど。
 女性が振り向いた――

 っっっ!?

 俺は心臓が止まりかけた。
 女性の顔が…………腐っていたからだ。
 顔に……………………ウジ虫が数匹湧いていた。
 右目の眼球は垂れ、いまにも落ちそうだ。
 頭部に大きな裂傷があり、そこから……脳みそが……飛び出てもいた。
 それに、近づいてみて分ったが、肉の腐ったような匂いもしている。
 女性は……そう、まるでゾンビのようだった。
 ゾンビ映画にでてくる、|動く死体(ゾンビ)のようだった。


 な、何者だ?
 そう思った俺に半透明の枠が見えた。

 ゾンビ(マイナーゾンビ)
  
  レベル:一
  弱 点:陽光・塩(特に清められた塩)・聖属性攻撃全般

 
 ――と、枠には書かれている。

 ゾンビ……って、この女性が?
 ここが魔物(モンスター)もいる異世界なら、モンスターの代表格であるゾンビがいても、不思議ではないのかもしれないが…………。

「あぁあぁ……うぅううう……あぁ~……」

 女性――いやゾンビは、人のものとはおもえない呻き声をあげ、俺に近づいてきた。
 本能的に俺は危険を感じた。

「(や、ヤバい、なんとかしないと)」。

 このままでは、こ、殺されるかもしれん。
 心臓がバクバクと鳴りだした。
 足の震えが止まらない。
 恐慌に陥りつつも、俺はその場にしゃがみ、手ごろな大きさの石を拾った。
 そしてゆっくりとだが、しかし確実に近づいてきたゾンビの腐った顔面に――石を投げつける。
 思っていた以上に、俺が投げた石は速度が出た。

 ガンっ!

 コントロールなど自信が無い俺だが、距離が近かった為もあり、見事に命中した。
 それも、ゾンビの残っている左目に当たったのだ。
 投石のダメージがあったのか、その場でうずくまるゾンビ。

「(い、いまのうちにっ!)」

 俺は、慌てて広場を脱出した。
 近づいてトドメを刺すという考えなど、少しも浮かばなかった。
 とても傍まで近づけない程、怖かったのだ。

 かなりの距離を走った。
 材木――丸太――が山のように積まれている場所まで逃げて来た。
 荒い息を整えるためにも、俺は、丸太の一つに腰を掛けた。
 そして、状況を整理する。

「まさか……ゾンビなんかが本当にいるなんて」

 この異世界では、ゾンビも、やはりモンスターの一種なのか?
 それにしても、町の中をゾンビがうろついているなんて…………。
 一体、この町になにが起ったのだ?

 え!?

 ――突如、俺の脳裏にある映像が、 “画質の悪い白黒(モノクロ)”で浮かんできたぞっ。
 かなり昔の古典映画のような……モノクロによる動画が早送りで浮かんできた。
 そしてそれは――一匹のゾンビが引き起こした惨劇の映像だった。

  
■■■■■■■■■■

 夜中、町の共同墓地にある墓から這い出てきたゾンビに、寝入っていた住民たちが数人、襲われていた。
 そして、ゾンビに噛まれた人間のうち、何割かはゾンビ化し、次々と他の人間を襲った。
 一夜にして…………街中がゾンビで溢れていた。


■■■■■■■■■■


 まるで古典的ゾンビ映画のような映像が、浮かんできたんだ。

 な、なんだこれは?
 ひょっとして…………これも『神眼』の力か?
 女神リアナは『神眼』により、過去を “視る” ことが出来ると言っていた気がする。
 では、いま俺の頭に浮かんできたのは、過去、実際にこの町に起きた出来事なのか?

 この町に過去、起きた惨劇…………。

 バタンっ!!!!

「(ヒッ!?)」

 俺は思わず叫び声をあげそうになった。
 数十件の家の扉が、一斉に開き――ゾンビが大量に出てきたからだ。
 空き家だと思っていた家々から、ゾンビがゾロゾロと出てきたのだ。

「な、何だよこの状況」

 ……洒落になってない……。

 思わず涙目になってしまった俺は、顔を引きつらせた。
 数十体のゾンビに俺は包囲されていた。
 神眼で見たら、全員――ゾンビだった。

「(恐怖で……失禁しそうだよ……ハハ……)」

 このまま、俺は多数のゾンビ達に襲われるだろう。
 そして、喰い殺されるか、あるいは噛まれて同じようにゾンビ化する……かもしれない。

「(――冗談じゃないっ!)」

 その場でへたり込みそうになった俺だが、なんとか自分を奮い立たせた。
 逃げないと――いや無理だ、完全に囲まれている。

「(ならば――倒す? だがどうやって? 武器もないのに)」

 小さな石はいくつかあるが、とても数十体のゾンビを相手に出来そうにない。
 せめて……せめて、 まともな『武器』でもあれば――
 それも、リーチのある『長物(ナガモノ)』があれば――
 この時――俺の目に『丸太』の山が止まった。

「(俺の好きな漫画でも、『丸太』を武器に闘ってもいた……な)」

 その漫画で主人公が戦っていた相手はゾンビではなく、吸血鬼や邪鬼(オニ)だったけど。
 正直言って、この時の俺は、恐慌にかられ錯乱状態に近かった。
 だから、『丸太』を『武器』にしようと咄嗟に判断した。
 冷静に考えれば、人の胴体ほどもある丸太など、普通の人間が、武器として振り回せるわけがないのに。
 そして俺は、超人的な腕力を持っている訳ではモチロンない。

 だが――「ぬぅっ」――このとき俺は両手で丸太を担ぎ上げることが出来た。

 さらには、無茶苦茶にだが丸太を振り回せた。
 長さ二メートルを超える丸太は、俺の体重よりも重そうだったのにも関わらず、だ。
 日本刀や西洋の剣でも数キロの重さと、どこかで聞いたことがある。
 だというのに数十キロはある丸太を俺は武器として――振り回せていた。
 ステータス的に俺の筋力は、この世界の一般人とくらべて倍もあるから……か?
 あるいは、火事場の馬鹿力的なものかもしれない。
 とにかく、俺は近づいてくるゾンビどもを追い払う為、やたらめったらに丸太を振り回した。

 それこそ必死に。

 ゴキィンッ!!!

 俺が振り回した丸太が、ゾンビ達の一体に命中した。
 ほとんど偶然だったが、ゾンビの測頭部を痛烈にヒットして――一撃で倒した。
 頭が半分以上潰れ、脳みそがほとんど飛び散ったそのゾンビは、地面に倒れたままビクンビクンと痙攣し続けている。
 起き上がっては…………こない。

 ひょっとしてこれは――いけるか?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(次回予告)
驚

S「さぁ、丸太くん……じゃなくて、丸田くんは、無数のゾンビたん相手に 丸太なんかで本当に勝てるのか!?」
S「次回も目を離せないのっ!!」
S「わっくわくのどっきどきだね♪」
S「次回もよろしくなのっ!」

S「――んが、うぐ」
S「次回予告、終わりぃ♪ なの☆」


2驚

D「ちょ!? あたしまだ一言も喋ってないのに終わらせちゃった!?」





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